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【特集】多様化するプリペイド決済の今~ソフトバンク・ペイメント・サービス編~(2015年7・8月号)
ポストペイの性質を併せ持つVisaプリペイド
「前払式支払手段」と「資金移動」の二本柱
SBPSが発行している「ソフトバンクカード」は、ソフトバンクの携帯電話ユーザーを対象にしたVisaブランドのプリペイドカード。チャージしたバリューは、Visa加盟店でのショッピング、海外ATMでの現金引出し、金融機関の口座への送金、および他カードへの送金に利用できる(送金機能は今後対応予定)。
Tポイントカードの機能も搭載しており、Visa加盟店での支払に応じて200円ごとに1ポイントが付与される。貯めたポイントはTポイント加盟店で1ポイント1円として利用できる。また、「ソフトバンクカード」にバリューとしてチャージすることで、決済に使うことも可能だ。
最大の特徴は、1枚のカードに資金決済法上の前払式支払手段に該当する「プリペイドバリュー」と、同じく資金移動に該当する「現金バリュー」の二つのバリューが同居している点にある。前者は、Tポイントや「ソフトバンクまとめて支払い」(月々の携帯通話料と合算)からチャージ可能だが現金化はできないのに対し、後者は銀行振込などでチャージして海外のATMから引き出すこともできる。通常は、異なるカードで提供されるサービスだが、ソフトバンクカードではバリューを二つに分けて運用している。

事業企画本部 事業企画部
担当課長 福井広樹氏
ソフトバンクカードにおけるバリューの区分は、ショッピングだけで使っている限り、ユーザーは意識する必要がない。両方のバリューにチャージしてあっても、決済の時は「プリペイドバリュー」から先に消費され、その残高がゼロになると「現金バリュー」から引き落とされるようになっている。今後、提供が予定されている送金系の機能を使う際は、それぞれの残高やメニューごとに決まっている利用限度額を意識する必要があるため、入会後に設定される「会員専用ページ」などで状況を確認しながら、サービスを使うことになるという。
「ユーザーの方には、法制度上のバリューの違いは見えない話ですので、送金機能の提供開始時にはそれぞれのバリューの扱い方を使う側の視点からていねいに説明していきます。送金系のサービスは日本ではあまり普及していませんが、分かりやすいメニューを整備していきたいと思っています」(ソフトバンク・ペイメント・サービス 事業企画本部 事業企画部 担当課長 福井広樹氏)
「プリペイドバリュー」と「現金バリュー」の二つのバリューポケットを持つ「ソフトバンクカード」は、他社のプリペイドカードに比べ、チャージと利用(決済/出金)の機能が多彩になっている。チャージでユニークな機能が、オプションの「おまかせチャージ」だ。「この機能を設定しておくと、支払い時に残高不足になっても自動的にチャージされ、後日、指定の銀行口座から引き落とされます。プリペイドは本来、チャージの範囲内で使うものですが、同じ1枚のカードにポストペイのような機能を持たせることができるのです」(福井氏)
仕組みとしてはクレジットカードの翌月一括払いに近いため、申込時はクレジットと同様の審査が必要で、対象も高校生を除く満18歳以上となっている。なお、与信業務はワイジェイカードが行っている。
プリペイドとしてオーソドックスな事前チャージは、「銀行振込」「口座振替(ジャパンネット銀行)」「ソフトバンクまとめて支払い」「Tポイント」が選択でき、今後「キャッシング」も加わる予定(下図)。「銀行振込」は会員が普段使っている金融機関から会員ごとに割り当てられたジャパンネット銀行のチャージ専用口座に振り込む方式。「口座振替」は、同行に口座を持つ人がチャージ専用口座に資金を移す際に使う。
「ソフトバンクまとめて支払い」は、カードにチャージするバリューを通信料金と一緒に支払うもの。「Tポイント」は、カードに貯まったポイントをバリューに移す機能。そして「キャッシング」は「おまかせチャージ」契約者向けのサービスで、利用者ごとに設定するキャッシング利用枠からチャージできるようにする方式だ。

それぞれチャージ方法も異なる。
福井氏はソフトバンクカードの商品設計の経緯について、「もともとの目的は、“プリペイドカードの発行”ではなく、ソフトバンク加入者の方々に、現金と同じような感覚で使える手段を提供することでした。お金を使う、貯める、そして送るといった行動をする上で、今の時点でベストな形は何か。ここから発想すると、審査不要ですべての加入者が取得でき、もっとも普及したVisaのネットワークが使える『Visaプリペイド』。ここに『資金移動』の機能を加えることに集約されたのです」と説明する。
チャージ手数料やアカウント管理費用などを積み上げる一般的なプリペイドに比べ、ソフトバンクカードはキャッシングによるチャージや「おまかせチャージ」を利用する際のリボ払い、送金系のサービスも加わることで、トータルで見た場合の収益性は高くなる。その一方で同社の狙いは、“カードビジネス”単体の収益だけはなく、通信事業との連動で関連ビジネスを活性化していくことにあるという。
もう一つの重要な施策が、「Tポイント」との組合せだ。もともと通信料金の支払いでポイントが貯まるようになっているが、通信料金や加盟店で貯めたポイントをVisa加盟店で使えるようにしたことは、大きなステップだったという。
福井氏は、「『Tポイント』の使い途を拡げた点は、高い評価をいただいています。ポイントに汎用性を持たせることで、通信事業者、ソフトバンクに対する会員のロイヤリティを高めていく。手数料などと違って定量的な評価は難しい部分ですが、ここはカードを投入した狙いの一つであり、手応えは感じています」と解説する。
2015年8月にはカード発行と利用を加速するため、ファミリーマートでのカードショッピングに対し通常(200円で1ポイント)の4倍、おまかせチャージ」の利用者には5倍が貯まるキャンペーンを実施している。今後の展開に関しては、発行枚数などの目標値は非公開だが、「カードの性質を考えると、すべてのソフトバンクユーザーに持っていただきたい」(福井氏)。中長期ではグループのリソースを生かし、非接触ICやモバイルアプリを含めた展開も視野に入れているという。
ソフトバンクグループの先進性と行動力を考えると、早い時期に何らかの動きがあるかもしれない。
(CardWave 2015年7・8月号掲載)
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