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2016.04.13

【特集】 FinTechが示す決済ビジネスの可能性~orb編~(2015年11・12月号)

“ブロックチェーン”を使う新しい金融の形
地域通貨への適用で地方創生の起爆剤に

 

Orbは2015年9月、分散型のクラウド・コンピューティングシステム「Orb(オーブ)」の開発を発表した。ブロックチェーンの技術をベースに独自の認証アルゴリズムを加えたもので、認証時間の短縮や低コスト化を実現し、「ビットコイン」などのシステムに比べ、適用分野を拡張できるとされている。「Orb」発表と同時にアプリケーションの第1弾として、地域通貨などの業務を想定した「SmartCoin」の提供を始めている。

 

 

「非中央集権型」で情報システムの刷新を

Orb  CEO 仲津正朗氏
Orb
CEO 仲津正朗氏

 Orbが開発した「Orb」は、「非中央集権型クラウド・コンピューティングシステム」を構成するための基盤技術。金融をはじめ現在の情報システムの多くは、全体を管理するサーバを中心に置き、PCなどがサーバにアクセスする「中央集権型」で運用している。
 これに対し「Orb」はシステムを構成するデバイスを全て対等に扱い、それぞれの端末に処理を分散するP2P(Peer to Peer)の考え方に基づいている。
 この方式の利点は、コストと安全面にある。管理サーバやデータセンターが不要なため、システム全体のコストは大幅に下げられる。中央集権型は故障や攻撃によってセンターに障害が発生すると全てが停止するが、P2Pは一定の台数が稼働していればシステム全体の停止は免れるため、安全性も比較的高い。
 現在、米国でもFinTechの“本命”として仮想通貨と共に脚光を浴びているブロックチェーンは、センター(中央銀行、証券取引所など)で認証処理を集中管理する形ではなく、取引を行う誰もが認証に関与できる非中央集権型だ。現在のブロックチェーンには前述した利点はあるが、金融業務に適用するには課題も残るという。
 Orb CEOの仲津正朗氏は、「ブロックチェーンは『ビットコイン』の基盤技術として注目されていますが、この方式自体が発展途上で、金融業務には必ずしも向かないことが分かってきました。『Orb』はブロックチェーンに独自のアルゴリズムを注入し、FinTechをはじめとするさまざまな実務に適用しやすいようにしたものです」と説明する。

 

ブロックチェーンが持つ構造的な課題に対処

 ブロックチェーンは、一定数の取引記録をまとめた「ブロック」を時系列につなげた「チェーン」で管理する技術。チェーンは取引の記録時に分岐する場合があり、システムの参加者は次のブロックを受信した際、長い方を「正」として他のチェーンは破棄する。
 銀行の勘定系やカード決済などの業務では、トランザクションの結果を確定させる「ファイナリティ」という考え方が重視されるが、ブロックチェーンは各チェーンに対するファイナリティは保証しない。そのため分岐したサブチェーンを「正」と見なして決済を走らせると、書き換えられしまう場合がある。“A氏の口座残高=5万円”のチェーンを処理しても、その後で“残高3万円”になった「正」のチェーンが届く可能性が捨てきれない。
 最終的には無効になったチェーンを「正」と扱うことはないため取引の正当性は保たれるが、このタイムラグが障壁となる業務への適用は難しい。
 集中管理を担うサーバを置かないブロックチェーンの構造的なデメリットだ。そこで「Orb」では、自治体や決済事業者などの運営側「スーパーノード」と呼ぶ管理者に相当するマシンを設定し、一定のルールに従って定期的に取引を確定できるようにした。「全ての参加者がチェーンを認証できる自律分散型の特性は残したまま、スーパーノードにファイナライズの権限を与えることで、チェーン分岐の課題を吸収しました。ファイナリティを出す時間間隔はノード側で設定できるため、レスポンスを優先する決済系から多少の遅れは許容できるデータ照会まで、業務の性質に応じた柔軟な設計が可能です」(仲津氏)
 なお、チェーンの認証に要する時間は「ビットコイン」は10分だが、「Orb」は5秒前後、通信遅延などが発生した場合も平均16秒とされている。こうした従来のブロックチェーンにはない概念を注入したことで、さまざまな実務への適用が見えてきたという。

 

 

地域通貨の力を引き出す既存インフラも有効活用

 「Orb」を利用したサービスとして、仮想通貨発行・運用プラットフォーム「SmartCoin」を提供している。想定する主なマーケットは地域通貨だ。
 「中央集権型の法定通貨の運用環境では、地域間の競争が発生し優劣が出てしまいます。そこでブロックチェーンを応用した自律分散型の通貨を創り、地方自治体などが発行主体となって経済圏を確立します」(仲津氏)
 「SmartCoin」は電子化した仮想通貨の形で提供し、決済アプリやデバイスなどは限定しない。例えば、ECに用いる場合は、自治体などが管轄するサイトで地域通貨を購入し、地域加盟店でのショッピングや地元の金融機関を通じた支払いに使うといった形で運用できる。リアル店舗で利用する際は、非接触IC対応のモバイル端末やPOSなどの既存のリソースを生かした構築も可能だ。
 運用に対する負荷も低い。例えば、自治体や商店街が導入する場合、Web画面から通貨の名前、チャージ金額の上限と有効期限、チャージボーナス(後述)、ブロックチェーンの特徴である「マイニング」(サービスの参加者がチェーンを認証する作業)に対するボーナスポイントなどが簡単に設定できるようになっている。

 

「Orb」のアーキテクチャー。「Orb」自体は、計算機や通信回線など既存のリソースを共有するためのプラットフォームで、その上に決済などの業務アプリを載せる。
「Orb」のアーキテクチャー。「Orb」自体は、計算機や通信回線など既存のリソースを共有する
ためのプラットフォームで、その上に決済などの業務アプリを載せる。

 

 

ボーナスと自然減価で仮想通貨の回転を上げる
 「SmartCoin」の運用のカギは、チャージボーナスと自然減価だ。チャージの際、例えば1万円に対して300円分をボーナスで増量し、電子マネーの利用を促す。ボーナスを付けるだけでは運営側の持ち出しになるため、一定期間利用がないと減算する仕組みを入れて、ユーザーにも若干の負荷をかけると同時に回転率の向上を狙う。
 電子マネーの世界では、自然減価は斬新なものではない。ドイツの「キームガウアー」という地域通貨では、3カ月で2%の自然減価で10年間運用した結果、ユーロに比べ3倍の回転率を達成したという。
 「減価があれば早く使おうとする心理が働きますから、回転率は必ず上がります。現在はサイト過多の状況で、商品で差別化することは困難なので、お金の回し方で優位に立つしかありません」(仲津氏)
 地域通貨の回転が上がれば上がるほど、地元の加盟店と金融機関を中心とする地域経済は活性化し、地元ユーザーの経済的囲い込みに結びつく。
 地域通貨自体は十数年前から各地でトライアルが行われているが、成功例はごく一部に限られる。多くのプロジェクトが頓挫した要因は、システム構築と維持に要するぼう大なコストと、自治体にかかる運用負担だ。
 「国内の銀行を結ぶ全銀ネットの場合、24時間365日稼働のシステムの開発費は800億円程度とされています。センター不要の非中央集権型のコストは比較にならないレベルです」(仲津氏)
 システムの“ダウンサイジング”に成功した点も大きい。「ビットコイン」の場合、チェーンを認証する作業は構造的に“パワーゲーム”が発生し、巨大なシステムリソースを持つユーザーが有利だが、「SmartCoin」は機会均等、スマートフォンレベルで認証できるように設計されている。
 「SmartCoin」の料金体系は、500IDまでは初期登録費や月額利用料、トランザクションフィーも無料で、それを超える場合はシステム構成に応じた個別見積となっている。
 「SmartCoin」の本格稼働は2016年夏以降の予定だが、すでに複数の自治体や決済事業者などとサービス設計に関する協議に入っているという。また、現在開発中の「Orb」新バージョンでは、ファイナライズ時間の劇的短縮などを実現し、決済系のより広い領域への適用に加えて契約承認業務やIoT(Internet of Things)なども視野に、「新たなコンセンサス基盤」の確立を目指している。

 

 

(CardWave 2015年11・12月号掲載)

 

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