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【特集】CLOの“送客力”は本物か?~大日本印刷/日本ユニシス編~(2014年9・10月号)
商品単位のクーポン発行に対応したCLO
導入店舗の開拓から運用までをカバー
大日本印刷(DNP)と日本ユニシスは、2014年秋からCLOのサービスを順次開始する。一般的なCLOとは異なり、クーポンを店舗単位でのクレジットカード決済に対してではなく、店舗でどの商品を購入したかという商品単位でも発行できるようにした点が特長だ。加えてDNPは既存のクーポン、ポイントなどのサービスで豊富な運用実績を持つ。CLOの展開においても蓄積したノウハウを生かし、システム提供、コンサルティング、そして運用までをサポートすることで、シェア拡大を図っていく。

ビジネスイノベーション本部
新規ビジネス開発室長
中根祐二氏
DNPと日本ユニシスが提供するCLOは、クレジットカード会社が保有する会員属性と決済履歴のデータから抽出した会員にクーポンを配信し、会員が加盟店でカード決済した際に、キャッシュバックなどのインセンティブを付与するサービスだ。カード会員に対しては、あくまでカード会社のサービスとして提供され、DNPとユニシスが前面に出ることはない。
サービスの特長は、まずクーポンが店舗の単位だけでなく、商品を指定した形で配信できる点。通常、クレジットカード会社は、カードの利用について店舗レベルでの把握はできるものの、商品レベルでの把握はできない。つまり、どの店を利用して総額いくらカード決済したかは分かるが、何を買ったかまでは分からない。そのため一般的なCLOで配信されるクーポンは加盟店単位、「A店での買物に付き10%オフ」といった形になる。今回のサービスでは、カード決済の情報(店舗、日時、金額など)に加えて、POSのデータを抽出し、どの商品を買ったかまで識別できるようにしたところが他社の競合サービスとの違いだ。ちなみに、商品を指定できるCLOサービスは国内初とされており、クレジットカードの決済データとPOSの情報を連携させる技術は特許出願中だという。
大日本印刷 C&I事業部 ビジネスイノベーション本部 新規ビジネス開発室長の中根祐二氏は、「対象を商品レベルとすることで、さまざまな形でキャンペーンが展開できるようになります。また、クーポン発行に伴う販促費についても、従来のような加盟店がすべてを負担するだけでなく、メーカーとの連携、タイアップ等もでき、サービスを展開しやすくなります」と利点を説明する。

クーポン配信、POS データとの紐付け、清算用データ生成などをカバーする。

新ビジネス推進部
マーケティング事業推進室リーダ
鈴木悟嗣氏
メーカーが値引きの原資を負担するキャンペーンは、コンビニやスーパーなどで盛んに行われている。CLOが既存の方法と異なるのは、詳細なターゲティングができる点だ。
「カード会員の属性と履歴を調べ、例えば、今回は年齢層を絞ってみる、自社製品の購入歴がない人にアピールするなど、商品の特性と状況に合わせたマーケティング展開ができます。不特定多数を対象にする方法と比べ、特に新製品のプロモーションなどでは、メーカーは原資を有効に使えるはず。加盟店とカード会社は、堅実な集客手段が確保できます」(日本ユニシス 新ビジネス推進部 マーケティング事業推進室リーダ・鈴木悟嗣氏)
DNPならではの強みとして、中根氏は特典のクオリティ維持を付け加えた。同社はポイントやクーポンの運用実績が豊富で、会員が魅力を感ずる還元率や継続利用を促すための施策といった知見を蓄積している。CLOの展開に際しても、加盟店へのコンサルティングを通じ、サービスの活性化を支援していく。

新ビジネス推進部長
森口秀樹氏
DNPと日本ユニシスの役割分担は、大きく分けるとユニシスがシステム構築を担い、DNPは運用を受け持つ。運用までトータルでサポートできる点が二社連合の強みであり、システム提供だけを行う事業者との違いだという。
DNPが実践する運用は、クーポンの起案から作成、配信、効果測定など、CLOに必要な一連の業務をカバーする。例えば、クーポンの起案では、客層の抽出からクーポンの内容、配信タイミングなどに関し、加盟店と何度かやり取りして詰めを行うなど、フェイスツーフェイスの作業も含むという。
システムの部分は、会員から申請があったクーポンの有効化、POSデータの取込み、インセンティブの清算用データ作成などの処理だ。
会員のデータを持つカード会社なら、加盟店からPOSデータを収集できれば、一連のサービスを自社で運用することは不可能ではない。しかし、サービスの提案からクーポン作成、コンサルティング、キャッシュバックの処理を円滑に回すとなると、部署を一つ立ち上げるぐらい規模になるだろう。
「限られたリソースの中で、初期コスト、運用コストを極力抑えてCLOサービスを実践するには、業務委託していただく方法が有効な選択肢だと思います」(日本ユニシス 新ビジネス推進部長・森口秀樹氏)
ビジネスモデルは他のCLOサービスと同様、成果報酬型をベースとし、クーポンが決済に結びついた時点で、加盟店に対してフィーを課金する。DNPと日本ユニシス、カード会社の間はいわゆる「レベニューシェア方式」で、業務委託の費用は成果報酬の収入によりまかなう。CLOサービスを導入するカード会社には、原則、初期費用、運用固定費用などはかからない。
秋以降の営業活動は、カード会社とパートナーシップを結び、DNP/ユニシスが、参加店舗の開拓、クーポンの企画・提案の段階からサポートしていく。DNPの強みについて中根氏は、「カード会社の加盟店は、小売や流通、飲食関係が中心で、メーカーにはアプローチの手段が少ないと思います。その点、当社は広告制作やソリューションで、ユニシスさんはシステム構築でメーカーとパイプがある。CLOの間口拡大からサポートできる点は、カード会社にとって大きな利点だと思います」と語る。
今後の計画としては、クーポンを配信するメディアの強化が挙げられた。当初は、端末に接する頻度や位置情報が利用できるなどの機能面を重視してスマホを先行させるが、クーポンとの接点は多い方がいい。Web明細からの配信なども予定しているという。
中長期では、カード会社以外の事業者も視野に入れている。
「利用履歴があって、決済データをトレースできるシステムは、クレジットカードだけではありません。クレジット以外の金融系事業、デジタル決済が行われている領域には、ほとんど適用できると考えています」(中根氏)
クレジット以外の領域に広げていくためにも、商品ベースのクーポン配信は必須だという。例えば、同一加盟店でもクレジットユーザーには、「2万円以上の買物に付き、2,000円キャッシュバック」、少額決済を想定したサービスの会員には、より安価な商品を指定したクーポンを出すなど、決済サービスの特性に応じて、加盟店やメーカーのニーズに合わせて、フレキシブルな展開ができる。
CLOのサービスが出揃ってくる時期には、こうしたきめ細かさが次のキーワードになるかもしれない。DNPと日本ユニシスでは、CLOサービスで2016年に15億円の売上を目標に掲げている。
(CardWave 2014年9・10月号掲載)
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